「器」という文字を眺めていると、なんとなく家庭の食卓に見えてきませんか?
大きなテーブルを、お父さん、お母さん、子どもたちの4つの口が囲んでいて、食事をしながら笑いあったり、大声でおしゃべりを楽しんだり。
梅乃瀬窯が生み出す器は、まさにそんな家族団欒が見えるような、温かい丸みをたたえた形をしています。「このお皿なら、きっとあの料理。
テーブルのまん中に置くと、誰が一番先に箸を伸ばすだろう」。そんな想像をして思わず微笑んでしまうような、不思議な魅力。
シンプルな絵付けや形の中の、どこにそんな魅力が隠れているのか。窯主の佐賀しげみさんの案内で、梅乃瀬窯の奥へ、足を踏み入れてみました。
愛媛・砥部焼の代名詞は、白磁に呉須(藍色)の絵付け。梅乃瀬窯はこの伝統に新たな手法を加え、料理が映えるシンプルなうつわ作りをコンセプトとしている。]梅乃瀬窯特有のやわらかな青白磁は、ナラの天然灰を使って独自開発した釉薬がもたらすもの。
素焼きした陶石を釉薬に加えることで、強すぎずマイルドな色味へと昇華する。さらに釘やカンナで溝を掘り、顔料を埋め込む技法「呉須象嵌(ごすぞうがん)」により、溝にたまった釉薬が立体的な滑らかさをプラス。シンプルながらも表情豊かな梅乃瀬窯のうつわは、和食・洋食・中華…どんな料理ともよく馴染む。
陶石を粉砕した石の粉が主な原料。細かく砕いた石粉を、粘土状にしたものが磁器土。この磁器土をろくろや石膏型などを使い成形。
素焼き後に絵付けを施し、釉薬をかけ、約1200℃~1300℃という高温で焼き締める。
硬く割れにくく、吸水性がなく表面の汚れが染み込みにくい性質で、電子レンジや食洗機に対応しているものが多い。
フォルムは、ぽってりと丸みを帯びた形が一般的。当窯先代の師匠から継承された「玉縁鉢(たまぶちばち)」がその代表例。
フチ部分を折り返して丸く厚みを持たせ、欠けにくく汎用性を高くしたうつわ。
現在では数軒の窯元でしか作られておらず、成形に高度な技術を必要とし、匠の技とも言われる。
私たち作り手は、お客様が求めているものを常に考え、日々進化していかなければなりません。
それは伝統工芸品を作っている小さな工房であろうが、最新鋭のITメーカーであろうが全く同じことです。
私たちは、手仕事というのは本当に素晴らしいものだと思っています。殺伐とした現代社会にあってこそ、人の心をより豊かにしてくれると信じています。
梅乃瀬窯は砥部焼のうつわを通して、食卓に「温かさ」を提供したいのです。
ひとりでも多くの方に、豊かな暮らしをお届けすることができたなら、私たちはこれほど嬉しいことはありません。